《MUMEI》

◇◆◇

「妖月」

 歩み寄って来た七尾が言ったそれが、この幼女の名である。

 妖月の目は月色だ。

 だがそれはただの月の色ではない。

 故に妖月──妖しき月と名付けられた。

「狐叉、どうしたのだ?」

 きょとんとして妖月が尋ねる。

 すると狐叉は何かを察し、眼をぎらりと光らせた。

「下がれ」

「‥?」

 その厳めしい口調には違和感を覚えつつ、妖月は素早く飛び退く。

 地が揺れたのはその時だった。

 そして現れたその姿を見、妖月は我が目を疑った。

「な‥!」

 それは先程退治したはずの物の怪だった。

◇◆◇

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