《MUMEI》

自然と私の口がそう動いた。

『我慢してるなら…』

あの日の続きを。

晶と、…体を繋げても、いいと思えるほどに。

そんな事は、家族には抱かない想いだ。


しかし、それと同時に私は思い出してしまった。


自分の体が汚れている事に。

無理矢理とはいえ他の男に抱かれた私を、晶は相手にするだろうか。


きっと、私が『命令』すれば、晶は逆らわない。


…そこまでして、私は晶に抱かれたいとは思わない。

晶が私を望むなら、応じる気持ちはある。


これが『恋』なのだろうか?


もっと、『恋』とは幸せで温かい感情だと思っていたのに。


「ゆき様?」

「あのね、美幸さん。…晶は、私の事、好きかな?」
「それはもちろん!」

「でもそれって…私と同じじゃないよね?
だって晶は人間じゃないもの」


私のように、わけのわからない感情に振り回されたりはしない。


それが何だか寂しかった。

百歩譲って私が晶に対する今の想いが恋だとしても―

晶が同じ想いを抱く事は無いのだ。


「ゆき様。もしもの話ですよ?

晶君が、生身の男でゆき様と同じように戸惑ったりしてたらどうします?」

「それはないでしょう?」

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