《MUMEI》

「無理だ」


美幸からゆきの気持ちを聞いた神はきっぱりと言った。


「どうしてですか? 両想いなのに」


美幸は首を傾げた。


「あぁ…ゆきと『晶』はな」

「だから、今はあなたが晶でしょう?」


美幸の言葉に、神はため息まじりに説明した。


「ゆきは、俺を昔とは変わってしまった晶だと思っている。

俺が、自分を無理矢理犯した神だとは思っていない」

「…あれから一年以上経ったんですよ?」

「ゆきは忘れていない」


未だに怯え、震える姿を神は思い浮かべた。


「だから、ちゃんと説明して…」

「俺は口が利けない事になってるんだぞ?」


喋れば気付かれるから、側にいられないから、そういう設定を作った。


「私から説明しましょうか?」

「必要無い。…結果は目に見えている」


ゆきはきっと、怒り狂う。
泣き叫ぶ。

神はもうゆきの傷付く姿は見たく無かった。

正確には

神の事でゆきが傷付くところを見たく無かった。


「正体がバレれば、側にはいられなくなる。

だから、…我慢などしていないて、ゆきに伝えろ」

「それで、いいんですか?」

「いい」

ゆきの側にいられるなら、神はそれで良かった

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