《MUMEI》

「ところで、ゆき様が急に晶君の体を気にし始めたのは、…何があったんですか?」

「お前には、関係無い」


美幸は頬を膨らませた。


「あなた方がギクシャクしていると、世話役としてはすごく気になるんですけど。

それに、二人が幸せになるよう手助けしてくれって紗己さんに頼まれてるんですよ、私」


「紗己、に?」


紗己は神を決して許さないと言った。

その紗己が、ゆきだけならともかく、何故、神の幸せも気にかけるか神にはわからなかった。


「紗己さんは、とっくにあなたを許して、ゆき様と幸せになってほしいと願っていました」

「しかし…」


「以前の、あなたに対する言動は、演技ですよ」


「…演技?」


神は開いた口が塞がら無かった。


「あの時は、ゆき様はまだ立ち直っていなかったから、あなたの性欲抑制のために、わざとああいう態度を紗己さんはとったと言っていました。

私は、今なら抑える必要はないと思いますよ」


「…無理だ」


そう言いながらも、神は期待していた。


紗己は、自分を許した。


それなら、ゆきももしかしたら…と。


「で、どうします? 我慢できます? 無理ですか?」

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