《MUMEI》

◇◆◇

 妖月が駆け寄る。

 その小さな手が触れるよりも先に、狐叉の体は、ばたり、と倒れた。

「狐叉‥っ」

「案ずるな。大した事では無い」

「すまん狐叉‥。我のせいなのだ‥」

「お前が気に病む事は無い」

「‥‥‥‥‥‥」

「妖月、見事であったぞ」

「我は‥紙術を使っただけなのだ」

 妖月は紙術師という、紙に書かれた文字により授かる加護から得た力を使い技を仕掛ける事が出来る。

 そしてそれは、妖月にしか成し得ない事なのだ。

 狐叉はそんな妖月を誇りに思っている。

「‥どうしたのだ‥?」

「いや、何も‥、?」

「まずは‥手当てをするのだ」

 妖月は涙目になりつつも狐叉を抱き上げ、ふさふさした尾を首に巻くようにしておぶった。

◇◆◇

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