《MUMEI》

ドクン…ドクン…。

辺りは静寂で、心臓の鼓動だけが鳴り響いた。


奴はこれから死ぬとも知らずに、取り巻きを引き連れ、女と歩いている…。


奴は立ち止まった。

懐から煙草を取り出し、にやけた面で口にくわえる…。

女がそれに火を点す…。

そして、この世で最後の空気と煙を吸い込み、こちらに向かって吐き出した…。


俺の右手の人差し指に力が加わる。

トリガーが引かれ、撃鉄が弾薬を発火させた…。

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