《MUMEI》

◇◆◇

 この姫──神楽は奏楽に秀でている。

 内裏の誰もが認めていた。

 だが。

 予てから、神楽はそれを不思議に思っていた。

 何故この調べに各は集まるのだろうか。

 女房達は、まだ局に戻る気配はない。

 一人が御簾の前に現れ申し出ると、神楽は答える代わりに細い絃を爪弾き出した。

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