《MUMEI》

◇◆◇

 それは女房達の為ではあったが、神楽自身、それは数少ない楽しみの一つであった。

 故に、この姫はそれを全く苦にはしなかったのである。むしろ幸せだと感じていたのだから。

「‥?」

 どさり、と何かが倒れるような音がした。

 と同時に、女房達の悲鳴が轟く。

(───何かしら)

 指が絃から離れ、その絃は、まだ余韻を残したまま小さく震えていた。

◇◆◇

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