《MUMEI》 「国雄……」 母さんは顔面蒼白だった。 「御祝儀、どのくらいか分からなかったから詰め込んじゃった。」 あるだけ、入れて来た。 「そのうち、使い込んだ分返すから。」 葬儀に嫌な話をしてしまった。 「…………あんた、今まで…………」 母さんはそれ以上言えなかった。 学校辞めて行方不明だった放蕩息子がぽっと現れたのだ。 さぞかし驚いただろう。 周りの俺に気付く反応は大きいもので葬式には合わない。 空いていた席に座ると昭一郎が隣り合わせだった。 恐らく、その隣は奥さん? 泣くかと横目で昭一郎を見てみても無意味だった。 涙までは流せない。 結局それまでだったのか。 俺も涙が出ない。レイに愛してるって言われてないからか? それじゃあ、昭一郎は狡いな……。 前へ |次へ |
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