《MUMEI》

◇◆◇

 それから暫く、神楽は桜の宮の局にいた。

 薬師は神楽に側に付いているよう言っていた。

 それだけで良くなるとは思えなかったが、いずれにせよ、神楽は桜の宮の側を離れる事は出来なかった。

 出来るはずなどなかった。

 桜の宮は未だ芽を覚ます気配はない。

「──────」

 時は、亥の刻を過ぎた。

 この時分になると流石に眠気が襲って来る。

「‥‥‥‥‥‥」

 うつらうつらとし始め、神楽は瞼を閉じる。

 音が聞こえて来たのは、その時だった。

◇◆◇

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