《MUMEI》
本当の誕生日
一月十一日。

一が三つ揃った日。

元旦何の夢も見なかった神は、久しぶりに夢を見た。

しかも


「また、お前か」


『年配者に向かって失礼な奴じゃな』


神の目の前には、金色の狐―


ゆきの父・神尉の剣の分身

鳴神がいた。


「何だか、縮んでないか?」


鳴神は、以前神尉と晶の過去夢を見せられ、説教された時よりも、目線が下がっている気がした。


『栄養が無いからな。そろそろ限界が近い。

儂も、『あの若造』も』


「何?」


『あの若造』


「晶の事か? そう言えば、あいつは?」


神は夢の中でも晶に会った事は無かった。


「若造には別の用がある。儂はお前に伝えねばならぬ事がある。

覚えておるか?

神尉様が出した『姫の伴侶の条件』を?」


「あぁ」


神は晶の記憶を辿った。


「『ゆきを生涯守ると誓う人間』だろう?」


鳴神は頷いた。


『その前に、儂が言った、姫が契るにふさわしい年は?』


「『二十歳を過ぎてから』」


ゆきは、今は十九だ。


「何だ? また説教か?」


鳴神は首を横に振った。


『姫の本当の誕生日は今日じゃよ。 姫は今朝二十歳になる』

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