《MUMEI》 「…何が言いたい。 まさかお前まで、ゆきを抱けとか言うつもりか? 俺は…」 『晶では無い、か?』 神は頷いた。 『まぁ、姫の元に行ってみれば良い。 後は姫が決める。 とりあえず、儂の意見だけ言わせてもらえば、お前は… 合格じゃ。 ではな、『神』』 鳴神は、それだけ言うと、姿を消した。 鳴神が神を名前で呼んだのは、初めてだった。 (何が起こるんだ?) ゆきの生まれた 本当の 二十歳の誕生日に。 神は、ゆっくり目を覚ますと、身支度を整え、ゆきの部屋に向かった。 珍しく、ゆきはまだ眠っていた。 あまりに気持ち良さそうなので、神は起こさず見守る事にした。 そのうち、 「おはようございます。 …まだ寝てるんですか?」 美幸が部屋に入ってきた。 何故か美幸は神を見て慌てた。 首を傾げる神に、美幸は無言で部屋にあった手鏡を渡した。 ! 神は声を出しそうになり、慌てて口を塞いだ。 ゆきを見つめる。 ゆきは相変わらず眠っている。 「ちょ、どこに行くんですか」 神が部屋から逃げ出そうとしたので、美幸が神の服を掴んだ。 前へ |次へ |
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