《MUMEI》

「ゆき様は目が見えないんですから、『その姿』も見えませんよ」

口をパクパクさせる神に、美幸は言った。


「それに…ゆき様おかしくかいですか?

いつもならすぐに起きるのに。

こんな時に、『晶君』が側にいなくてどうするんですか?」


そう言われて、神は渋々ゆきの側に座った。


「ゆき様?」


美幸が呼びかける。


「…失礼します」


美幸が肩をゆする。


ゆきは


まだ眠っていた。


「…一応、医師を呼んできます」


美幸が立ち上がり、部屋を出ていった。


その時。


ゆきの右手が上がった。


まるで何かを探すように。

神は戸惑いながらも


その手に触れた。


ゆきは、安心したように、神の手を握りしめた。


「…」


ゆきが、ゆっくりと目を開けた。


「…?」


ゆきは、瞬きを繰り返す。

そして、ゆっくりと、起き上がった。


ゆきが神を見つめた。


それから、神の手の感触を何度も確認して





次の瞬間。


ゆきが発した言葉に、神は固まった。






「…晶じゃない」






「あなたは…





神、君?


どうして、…?」

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫