《MUMEI》

夢を見ていた。

『主…』

とても、優しい声

ずっと、聞きたかった声

「晶、なの?」

私の問いかけに、

『本当の目覚めの日が、やって参りました。

…』

切なげな、その声は

どんどん遠ざかっていって…

「待って! 行かないで、晶!」


私の声に、私がよく知る晶が近付いてきた。


銀色の髪と瞳。


雪の結晶によく似た、額のあざ。


『主…』


逞しい体。


私は、晶にしがみついた。

「晶、もう、ドキドキしないの?」


『私は人ではありませんから』


「そう…よね」


これが、本当の晶だ。


ドキドキしない。


嘘もつかない。


『主。主の名の由来を、お教え致します』


「由来?」


『主の真の名も、『ゆき』なのです』


「そう、なの?」


晶は無言で頷いた。


「やっぱり、『雪』から?」


『いいえ。


父上は、… … と

願いを込めて


母上は、… … と

願いを込めて』


「それで、『ゆき』?」


『はい』


晶は、ゆっくりと私から離れた。


「…晶?」

『私も側で同じように祈っておりますよ、ゆき様』


晶は初めて私を『ゆき』と呼んだ。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫