《MUMEI》
薔薇色
そして、私は目を覚ました。

最初に映ったのは、天井。

それから、私の側にいる


黒髪・黒い瞳の青年。


私の右手は、彼の手と繋がっていた。


彼の手首には、小さな鈴がついている。


(この手の感じ…)


覚えがある。


私が目が見えなくなってから、ずっと私を支えてくれた、ずっと繋いでいた手だ。


でも、心配そうに私を見つめるこの顔は…


「…晶じゃない」



…私の言葉に、彼の体が固まる。


「あなたは…





神、君?


どうして、…?」


(どうして、そんな色をしているの?)


私は、まじまじと神君を見つめた。


初夢の女の人が言っていた色。


『薔薇色』ってこれなんだと、思えるような、鮮やかな色が、神君を覆っていた。


「…すまない」


私の視線から逃げるようにうつ向きながら、神君が口を開いた。


「すまない」


私は、まだ頭の整理がついていなかった。


「それは…あの時の事を言っているの?」


あの時。


私を無理矢理…


「物扱いした事を、謝っているの?」

「…う」


「違うんだ、あれは」


神君は、一気に話し出した。

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