《MUMEI》

◇◆◇

 蝶を見失った胡蝶は元来た道を戻るべく歩き出した。

 すると。

「‥‥‥‥?」

 現れたのは、市で会った旅人であった。

「ぁ‥‥」

 その肩には、白い蝶を止まらせている。

 旅人は肩から指先に蝶を移し、胡蝶に差し出した。

「‥?」

 戸惑う胡蝶。

 すると蝶は旅人の指から離れ、舞うように飛び胡蝶の髪に止まった。

「──────」

 ぴたりと動きを止めているそれは、まるで髪飾りのように美しく見えた。

◇◆◇

水無月に舞ひし蝶‐終

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