《MUMEI》

私の事が、気になっていた事

それが、初恋だと気付いた事

晶に嫉妬した事

私と離れるのが嫌で無理矢理抱いてしまった事

とりあえず抱いてからでも、私が好きになるだろうと簡単に考えていた事

その結果―

『姫』の力が増して、晶が消えた事。


「すまない」

「じゃあ、私が目が見えない間、晶だと思っていたのは…」


「…俺、だ」


神君はずっとうつ向いたままだった。


よく考えれば、おかしいところはいくつもあった。


体型の違い


体質の…違い。


「どう…して?」


何故、当主である神君が、私の為にそこまでするのか。


私は、神君の薔薇色を見てもまだ確信が持てなかった。


(信じられない)


神君が、私を


誰よりも、


『愛している』だなんて。

「償いたかったんだ」


「償い?」


(それは、違う)


色が違うと言っている。


「…他に、私に言うことは無いの?」


思わず私は神君に尋ねた。

「…え?」


神君が、初めて顔を上げた。


そこにいたのは


全てに無関心な当主でも


人の心がわからない俺様でもない


ただの、臆病な人だった。

「私、見えるんだけど」

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