《MUMEI》

「あ、あぁ…

情けない顔だろう?」


それも事実だ。


「不思議なんだけど、…あなたは翔子さんと結婚して、子供もいるのよね?」


なのに、薔薇色はおかしい。


「今の当主は男になった『姫』だ」


「は?」


『姫』が、男に?


「信じられない」

「事実だ」


神君は、嘘を言っているようには見えなかった。


「…そう。

それよりも、償いや謝罪以外に、本当に私に言うことは無いの?」


とりあえず、私は話題を元に戻した。


神君は、不思議そうな顔をしている。


私は大きく深呼吸をした。

晶の言葉を思い出す。


『母上は…
真っ直ぐ自分の信じた道を『生き』て『行き』なさい。

と、願いを込めて

『いき』…

『ゆき』と名付けたのです』


だから、私は躊躇わない。

自分の見えている色を信じて、真っ直ぐ神君を見つめて、問いかける。


「私には、あなたが『薔薇色』に見える。

『薔薇色』は、私を本当に愛している人の色だと教わった。

…そうなの? 本当に」


私の言葉に、神君は大きく目を見開いた。


「お前、御鏡の力が…」


「消えて…っ…」

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