《MUMEI》

◇◆◇

「どうしたのだ?」

 妖月が問いかけた。

 狐叉は妖月の髪に触れたまま、月色の眼を向ける。

「──────」

「狐叉?」 

 再び妖月が問うと、狐叉はその前脚をするりと滑らせた。

 艶やかな黒髪。

 妖月は、眠る時以外はそれを結い上げているのだが、この朝はまだ下ろしたままでいた。

 狐叉は梳くようにして妖月の髪を徐に撫でてやる。

◇◆◇

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