《MUMEI》 脱ぎ散らかした法被やシャツを片付ける。 「……なー、何回した?」 七生が着替え終えて定位置に戻る。 「はい?」 「せっくす。」 まるで宿題をしたかと聞いてくるような軽さだ。 「……聞いてどうすんの」 「恋人のこと知りたくなったらいけないって法律はある?」 「ないけど、プライバシー侵害じゃないか。」 どういう神経してんだ! 「だって、このままでいいのか? 悔しいじゃないか、精神的に傷付けられて実害が出て。」 七生がちらりと下半身に目をやる。 侮辱罪だ。 「彼女が全て悪いだけじゃないから。」 俺だって彼女のこと知ろうとしなかった。 七生みたいに必死に相手を掴むことは格好悪いと思っていた。 「相手の方庇うのか!」 急に怒鳴り出した。 「どうした急に大声で……?庇うも何も、もう別れたんだよ? 彼女にばっかり怒ってこれじゃあ……」 妬いてるみたい…… 「俺より先に二郎に教えた奴は狡いよ……。 これ以上に見付からないくらいイイのに、そいつは他のヤローを選んだ上にこんなに哀しませて、 ……俺 だったら、もっと 初めてでも、 や、優しかったかも。……よ?」 最後の方は自信無いのか。 「初めてな俺じゃないと好きにはなれない?」 「いいえ!」 そこは揺るがない。 「……こう、考えたらどうかな。 俺達、初めて同性を好きになって、初めて一生ものの恋をして、初めて法被を来て神輿を担ぐ姿に目を奪われて、初めて鎖骨に噛み付かれて、一緒にいる限りずっと続いてく……初めての連鎖。 七生と毎日を新しくしていくんだ。」 今この瞬間さえも新しい。“好き”が雨水みたいにパラパラ落ちて染みていく。 前へ |次へ |
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