《MUMEI》

「俺、二郎が誰かと付き合っているって気付けてなかった自分に動揺してた。

二郎が誰かにエロいとこ見せてたことに、独占欲を刺激されてつい、煩くしてた。

多分、二郎が体に触られて怖くなるくらい、俺も二郎のこと知っていないと怖いんだ。」

七生は知らない俺の過去に嫉妬したんだ。

好きだから、嫌われたくなくて隠し事をする。
好きだから、知っていないと不安になる。

そんなくだらない愛しさが時折互いを締め付ける。


「誤解の無いように言わせてもらうけど、俺は体の関係は無くてもいいから。

……したくないって言うと嘘になるし、欲情にも勝ててないけど、それを拒む権利がある。
約束するよ、俺は二郎の意思を尊重する。

今は二郎が俺を好きなことが俺の贅沢だから。」

俺への不謹慎な誠実さが堪らなく愛おしい。

「うん。
俺も今にきっと七生に触られても怖くなくなるよ。
それに、フラッシュバックしたのは七生に触られるのが怖いんじゃなくて嫌われるのが怖かったんだ。」

七生の手を膝に乗せる。
その指は膝から爪先へと下りてゆく。

「ななおって、すぐ触るよね……俺は……気持ち……いいですか。」

爪先から傷口にそして足の裏へ。

恥じらい後、ときめき。

「……気持ちいいですよ」

「ななっ……」

七生に足の裏を揉みほぐされて、身震いする。

「最近は焦れるの、楽しいかな。
初彼女だって二郎の足の裏がこんなに柔かいのとか知らなかったでしょ?

二郎のこんな国家機密知ってるの俺だけでしょ?

俺だけって、言って。」

哀願している。

「ななお だ……け。」

声を搾り出すと筋肉が緩む。七生に寄り掛かってしまう。

「二郎が俺に愛撫されて、可愛く鳴いてくれて嬉しい。
触らせてくれるんだからそれ以上は我が儘だね?」

感触を愉しむように足の裏を押す。
俺も七生の感触をよく味わう。
七生と居るとほわほわする……。

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