《MUMEI》

おれがまた歩きだそうとすると。



「かなめ〜!!!」



トイレから帰って来たらしい女子たちが
おれの周りに群がった。



もー、なんなんだよ!?



「ね、かなめ!!さっきのって西城先輩だよね!?」


「いつの間に〜!?」


「日曜って何!!?」


「西城先輩かっこよすぎ!!!」



…同時にしゃべんなぁ!!


おれは聖徳太子じゃねえ!!!



うんざりした顔をしていると、



「はいはい、面白がらないの!!」



そう言って、
青木が女子たちをなだめてくれた。


今のうちだ。



「えっと、じゃーお…わたし、用事あるから!!」



そう言ってその場を去ろうとする。



と。



「えーなになに!?
また西城先輩んとこ!?」



そいつらはぞろぞろとついてきた。


…女って、マジめんどくせえ…



追い払うのも面倒で、そのまま歩き続けると、
トイレの前に立っている『おれ』を見つけた。



おれは、『おれ』――蓬田の前まで歩いていくと、


蓬田の腕を掴んだ。



「行くぞ」



そうささやくと、おれは
驚いた顔をした蓬田の腕を掴んだまま、走り出した。

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