《MUMEI》
為すべき事
戦場は完全に混乱している。
上空からは「黒衣」が攻撃をしかけ、地上では「風姫」が近衛騎士やリーベルの部隊を相手に戦いが続いている。
「前方から・・部隊が戻って来ている?」
禾憐を追うようにアルトレアが率いていた部隊が戻って来ている。
困惑しながらも近衛騎士を叩き伏せていく。
「あの鳥か・・」
見上げる先、「黒衣」が執拗に攻撃を仕掛けている。

「・・・・・ん。」
周囲を見渡す。
遠く、聞こえているのは戦闘の音だろう。
「気が付いたか。」
声は、すぐ側で聞こえた。
「・・・何故、殺さない。」
ハンディングに問いかける。
「気まぐれに過ぎぬ。」
ハンディングの声や表情に偽りは無いように見える。
「ひとつ訪ねても良いか?」
「・・答えられる範囲であれば。」
答えながら、自分の状態を確認していく。
束縛はされていない。
「何故リーベルへ侵攻したのだ?」
「侵攻?違う、私達の任務は・・」
そう、任務は・・
「リーベルで皇国軍が軍事行動を起こすからそれを制圧しろと・・」
あくまで、戦争ではない。
皇国軍がリーベルに侵攻するのを防げというものであった。
「だが、事実として皇国皇帝を拘束し、自国へと連れて行こうとしたではないか。」
「・・・皇国への取引材料として拘束、殺害せよと命令されて・・」
「取引材料として、捕虜にするのは解る、だが殺して・・取引が出来るのか?」
何故、不審に思わなかった。
おかしい・・何かが決定的におかしい。
「ふむ・・やはり、操られていたようだな。」
「・・私が操られていたというのですか?」
「意識を逸らされていたといった方が良いか・・だが謎は解けた。」
頷くハンディング。
「なにが言いたいのだ、貴女は!!」
「これは無意味な戦、早々に戦闘を止めさせねば・・無駄死にが増える。今すぐ「風姫」を止めてくれぬか?」
その言葉に、現状を理解する。
「・・皇国軍は止めていただけるのですね?」
「無論、絶対に止めて見せよう。」
ハンディングの言葉に、頷くとアルトレアは立ち上がる。
「馬はそこに。」
彩詩が馬を示す。
「神守彩詩・・いずれ手合わせを願います。」
一言そういい残し、馬を走らせた。
自分の愚かさに後悔を抱きながらも、今やるべきことを為すために。

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