《MUMEI》

「あ。そうそう」



タルトを食べ終えた私に、椎名くんが切り出した。



「あのさ、さっき廊下で
イケメンに話しかけられたんだけど」


「へ!?」


「女子が言うには…ほら、お前が言ってた…」


「西城先輩!?」


「そう!それそれ!!
心配してたってさ」


「…ほんと!?」



…う、嬉しい…!!!



「おう。ほんと。
…あ。あと、日曜日がどうとか―…」


「え!?…あ―…!!!
…どうしよう…」



そうだ…


日曜日、先輩とお祭りに行く約束してたんだ…!!



「どーした??」



椎名くんが心配そうに首をかしげる。



「…日曜日、その、先輩とお祭り行く約束してて…
―…どうしよう…このままじゃ―…」



お祭りは5日後。
それまでに戻れるの―??


すごく不安になってきて、泣きそうになる。



「…おい、泣くなよ!」



焦る椎名くん。



だって、椎名くんに頼む訳には―…



「―…わかった!!」



椎名くんの言葉に顔を上げる。



「おれが、なんとかする!!」

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