《MUMEI》

2人で弁当を分けながら食っていると、



「あ、そういえば、瀬田くんから話聞いたの」



と、蓬田が切り出した。



「…なんの」


「あの時、瀬田くん、駅にいたでしょ??
病院まで付き添ってくれたみたい。
―…連絡とかもしてくれたんじゃないかな」


「まじで??」


「うん。目が覚めるまでは病院に居られなかったって。
…バイトがあるとかで…」


「あー、…だろうな」



…あいつのことだ。

貯めた金でバイク買うとか言ってたしな。



「…それでね、ネコのこと、聞いたの」


「…ネコって、お前が助けた??」

「そう。…あのネコね、事故の後すぐに逃げちゃったみたい」


「…逃げた、って…
目は??見えないんじゃなかったのかよ」


「…私がそう思っただけだし―…
…それはわかんないけど…」



少し沈黙。



「―…でも、取りあえず無事だってことだな!!」



おれが笑ってそう言うと、



「うん。…ほんとうに、よかった…」



ほっとしたように、蓬田も微笑んだ。

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