《MUMEI》 対面神音様を先頭に、私・神君の順に当主の間に入った。 私達を案内してくれた美幸さんは、入口付近の廊下に控えていた。 正面の台座に座っていたのは 金色の髪と瞳の男性。 (この人…『姫』だ) 一度見たら忘れない眩しい光は健在だった。 ただし、その中にも人間らしい感情の色が見えていた。 私の力が強くなったからか、それとも、『姫』が人間に近付いたのか、理由はわからない。 私は、不思議な気持ちでかつて『姫』だったものを見つめていた。 「急にいらっしゃるので驚きました」 「急用でしたから」 『姫』の言葉に、神音様が答えた。 「それより『神様』にいくつか質問と報告があるのですが」 (え?) 『神様』? 私は振り返って神君を見た。 「何でしょう」 神音様の言葉に答えたのは台座にいる『姫』だったものだった。 「今は、あいつが当主で『神』だ」 (ややこしいな…) 男性になったので『姫』以外の名前を付けたのはわかるが、自分の名前を付ける必要は無いと私は思った。 「…ゆき?話をすすめていいかしら?」 「は、はい」 神音様の言葉に、私は再び顔を台座の『神』…様に向けた。 前へ |次へ |
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