《MUMEI》
愛を加える
「そんなんじゃ幸せになれねーぞ」


え?誰?


「話聞く度に愛加の彼氏が気の毒に思えてくる…」


なんだ太一か…


「もう少しでいいから彼氏に愛加の素直な気持ちを話してみ。そしたら、きっと変わるはずだから…」


そんな…言えないよ。
もう良いの。
去っていった人のことなんか良いのよ…


「愛加は漢字の通り、他人から愛を加えてもらって普通の人間レベルになれるのかもな」


何よそれ〜!?
でも言われてみれば、そうかもしれないね。


???


太一の顔が歪みだし、少しずつ顔が崩れ始めた。


太一?


どうしたの急に!


「たいちーっ」

ガバッ



私は太一の名前を叫びながら目が覚めた。


「なんだ夢か…」


恋を相談する度に太一に言われていた言葉だった。


「そんなんじゃ幸せになれねーぞ……か…」


懐かしさと寂しさとで、その晩は泣きながら眠った。

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