《MUMEI》
ため息
 ふぅ……。

 俺はため息をつく。別に嫌なことがある訳でも気にくわないことがある訳でもない。

 何となく過ぎていく毎日に、欲のわかない渇いた心に気付いた時からの癖。

 朝起きて学校に行って帰って寝て――毎日同じ。

 そんな日々に何の意味があるのか、生きているのに何の意味があるのか……。どんなに勉強してもそれだけは分からなかった。

 今日も、家に帰って飯を食って風呂に入って1日が終わるんだろう。

 俺は、夕食の材料を買うためスーパーに立ち寄る。大学入学をきっかけに親元を離れて一人暮らししてるから、ご飯も自分で作る。

 元々家に居るのは好きじゃなかったから、丁度いい。

 今日は何作ろうかな?……っと言っても、只今の時刻は8時過ぎ。もうあまり食材は残っていない。

 まぁ適当に炒飯にでもして食うか……。俺はテキパキと食材を買い物カゴへと移す。

 レジへ向かう途中、デザートコーナーを通り過ぎようとした時――

 ぎゅっ。

何かにズボンを引っ張られ、振り返ると……。

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