《MUMEI》

私と美幸さんは、顔を見合わせて笑った。


「何だかよくわからないんですが、ゆき様がお元気になられて良かったです。

いなくなられるのは寂しいですが…時々はこちらにいらっしゃいますか?」

「多分…私は、新しい御鏡の当主らしいから、来る事もあると思うわ。

来たら、離れにも行くわね。

何になっても、私は私のままだから」


「嬉しいです」


私の言葉に、美幸さんはそう言って、涙を流した。


「今までありがとう。美幸さん」


「いいえ、いいえ。
きっと、また来て下さいね」


私は深く頷いた。


今の私があるのは


美幸さん・紗己さんを始めとする離れの人達が、優しく面倒をみてくれたからだ。


そして…もう一人。


私は、美幸さんから離れて、神君の前に立った。


神君は、とても、悲しそうな顔をしていた。


「彼にも挨拶を?」


神音様が私に話しかけた。

私は首を横に振った。


「そうよね」


神音様は、勝ち誇るように言った。


「お前には無いかもしれないけれど…」


神君が口を開いた。


声が震えていた。


「せめて、最後の挨拶を言わせてくれないか?

…頼む」

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