《MUMEI》
離さない
「だめよ」


私の言葉に、神君がショックを受けているのがわかった。


「そうよね。 行きましょう…ゆき?」


神音様が、私達を見て驚いた。


私の手が、神君の手を掴んでいたから。


「…ゆき?」


うつ向いていた神君が、顔を上げた。


「駄目よ…離さない。

別れの挨拶なんて許さない
あなたは、私の側にいるんでしょう?」


私の言葉に、神君と神音様が同時に目を丸くし、言葉を失った。


「な…に、言ってるの?
離れなさい! ゆき」


最初に口を開いたのは神音様だった。


「いいえ、神音様。
彼は自分が、晶の、私の剣の分身の代わりだと言いました。

だったら、共に行くのが当たり前です」

「だって、その男は…」


「彼と交わっても私の力は消えませんでした。

きっと…私はそういう者なのです」


『この子は、大物になる』

きっと、初夢でそう言ったのは、私の母で、神音様の姉の神那だと思った。


御剣の『守護神』と御鏡の『守護神』の間に生まれた私は、御剣では異質な存在だった。


それと同じように、御鏡の力も、私の力はきっと異質なのではないかと、私は思った。


(それに…)

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫