《MUMEI》

そもそも、『守護神』とは、国を、人を守る存在だ。

自分の大切な人も幸せにできないのに、自分自身が幸せになれないのに―


そんな存在が、人を、国を守れるわけがないと、私は思った。


(そんなの、おかしいもの)


例えば私が初めて晶の力を借りて義母を癒したように

初めて『守護神』として、透の事を守ったように


大切な人を守るという気持ちが、国を救うのではないかと


それが


『守護神』だと


この時


初めて私は自覚した。


だから…


「私は、神君と一緒で無ければ、御鏡に行くつもりはありません」


「ゆき…」


私の決意に神音様は戸惑っていた。


(当たり前よね)


これから当主になるという私が、男と一緒に行きたいと言うのだから。


御鏡の考え方でいけば、常識外れもいいところだ。


まして、『交わった』と言っても


無理矢理、だったのだから。


(不思議)


憎くて当たり前なはずの神君の手を私が掴んでいる。

でも


この手は


傷付いた私をずっと守ってくれた手でもある。


(不思議)


以前は私を傷付けるだけの手だったのに。


「お前の意志はどうなんだ?」

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