《MUMEI》
よしち
 俺が考えにふけていると今度はキキが俺に質問をする。

「ねぇ!あなたの名前は何ていうの?」

「あぁ。俺は、小室 幸知(こむろ よしち)」

 俺は心ここにあらずな状態で答える。

「よし……ち?」

 キキは、初めて聞いた単語を覚えるかのように自信なさげに呟く。

「そっ珍しい名前だろ?幸せを知るって書いて"よしち"って読むんだ」

 理屈を教えるかのように自分の名前の説明をする。

「よしち……。よしち!」

 キキは、もう覚えたよっと言わんばかりに俺の名前を呼ぶ。

 そんな一生懸命なキキを見て、俺は微笑む。ごく自然に心から漏れた微笑みだった。

「よしち笑った!」

 そう言ってキキも笑顔を零す。いつの間にかキキの小さな手が俺の手を握りしめていた。俺はその小さな手を握り返す。

 キキは繋いだ手を大きく揺らしながら歩き、また微笑んだ。

 そんなやりとりをしている内に俺の家の前まで帰ってきていた。

 やっぱり俺の家に泊めるしかないよなぁ……。

 俺はキキと手をつないだまま鍵を開け家の中へと入る。

 キキは家に入った瞬間

「よしちの家?わぁ〜おっきい!!」っと言って走り出した。

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