《MUMEI》

「私の方が、悪者みたいじゃない」


「…すみません、でも…」

その時。


「お話中、失礼します。
神音様に、御鏡から連絡が入っております」


閉じた入口の向こう―廊下から、男性の声が響いた。

「何かしら?」


「あ、私が」


そのままこの場に残っていた美幸さんが、慌てて廊下に向かった。


美幸さんは、スーツ姿の男性から、メモを受け取り、それを神音様に渡した。


そのメモに目を通した神音様は、目を見開き、何度も内容を確認すると、私と神君を見つめた。


そして、また大きくため息をついた。


「? 神音様?」

「時代が変わるという事かしら…

それとも、神那お姉さまと、御剣の神尉様の間に生まれたあなたが、御剣と、御鏡を変えたと言うべきかしら…」


言い終わると、神音様はもう一度、大きくため息をついた。


「…私としては、不本意だけれど、このまま反対して、あなた方にお姉さまの時のように駆け落ちされても困ります。

それに…一番の問題も今解決してしまったし」


『一番の問題』


それは、若く力ある当主の側に、若い男がいるという事だった。


御鏡の力は、男と交わる事によって失われてしまうから

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