《MUMEI》 とある放課後――――放課後の美術室に二人きり ちょっと、おいしいかもという下心が慣れないデッサンモデルを引き受ける決心をさせた。 卜部先輩が俺を見る。 B2の鉛筆に眼鏡を介して俺が映る。 「ヤイちゃん顔固い……女の子にモテないよ?」 「別にモテなくていいです。」 卜部先輩にモテなきゃ意味が無いんです。 「全くうちの部員ときたら講習ばっかで来ないんだもんなあ。ヤイちゃんて帰宅組だろ、美術部員になっちゃいなよー」 「黙って描いて下さい」 どうしてこんな話しながらも描けるんだか謎だ。 「ヤイちゃん俺に厳しいよねー」 「先輩が不真面目だからじゃないんですか」 「うわ、今の傷付いたー」 はっ、俺、またやってしまった! 「ごめんなさい!」 「ヤイちゃん今のでポーズズレたよ。」 無意識に椅子から降りて謝っていた。 「あああああ、ごめんなさ〜い」 嫌いにならないで! 取り敢えず定位置に戻る。 「違う違う、指はこう、右斜め。」 「 は」 吐息が漏れる。 突然、卜部先輩が指を触られたからだ。 あくまでもデッサンの為だけども。 「ヤイちゃんの手ぇちっさいなあ。ちゃんと食べてる?」 まだ触られてる。 卜部先輩の俯いた視線で指がむず痒い。 「先輩がでかいんです……」 192もある。 俺じゃあ届かない距離。 「ヤイちゃんがちっさいんだよ」 俺も155しかないけれど。 「弥一です。 ヤイちゃんて言わんで下さい。 先輩が呼ぶせいで皆ヤイちゃんて呼ぶんですから…………」 先輩が大声で廊下でそのあだ名を呼ぶから、あまり知らない人までヤイちゃんて認識している。 「じゃあ、止める」 あっさりだ。 ついでに定位置に戻りデッサン再開だ。 次へ |
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