貴方の中の小悪魔
を知る神秘の占い

《MUMEI》
開店します。
「おはようございます」
私はレジカウンターの中で釣銭を準備している女のスタッフに声をかけた。
「あ、おはよう」
彼女は橋本さん。この店の一番の古株で、もう十年以上もパートとして働いている。年齢不詳。この店の裏店長だ。
「はよ」
だるそーに挨拶してきた男の子は根岸くん。入って一年ほどの、昼間では唯一の男のスタッフだ。年齢、おそらく二十歳。
「DVDつけて来ます」
私は棚の引き出しから、DVDプレイヤーのリモコンを取り出した。
…一つ、…二つ、…三つ、…四つ、…五つ。……。
全部でたくさん。両手に抱えながら、プレイヤーの電源を一つ一つ点けていく。まずは洋画コーナー。
再生ボタンを押してっと。画面が流れ始めたのを確認してリピートボタンを押す。
次は海外テレビドラマコーナー。そして、邦画コーナー。
キュルキュルとディスクが回転する音が聞こえる。
十秒、二十秒。三十秒。
………まだか。
先にお笑いコーナーを点ける。そして、アニメコーナー。
 この店はなぜかアニメコーナーにDVDが三ヵ所も設置されている。イチ押しなのか?
確かに最近はアニメが人気だ。
 そんなことを思いながらリピートを押し、邦画コーナーへ戻る。
画面には『ノーディスク』
そんなわけあるか!ちゃんとディスクは入っとるわ!
私は心の中で機械に突っ込みながら、もう一度電源を入れ直す。
まあ毎日、朝から晩まで短時間リピートさせられたら機械だって調子も悪くなるだろう。
 今度はちゃんと読み込んだ。リピートを押し、確認してからレジへ戻る。時間は九時。
「開店するよ。斉藤ちゃん。オンエア点けて」
この店で斉藤ちゃんと呼ばれる私。あだ名なのか何なのか。
オンエアとは店のイチ押しシングルCDを流す機械のことだ。全部で二十枚。一曲三分ずつ流れる。
私は機械のスイッチを入れ、ボタンを押す。
曲が流れ始めた。
今日も長い一日が始まります。

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