《MUMEI》

……二週間前、先輩の寝顔にキスしたときは体温とか触感よりも自分の鼓動しか聞こえなかった。



……そして今は卜部先輩の掌の密着度合い、先輩の閉じた姿の格好よさに感覚を奪われてよく分からない。



「……これで、泣き止めよ、な?」

唖然、というやつだ。
先輩がだって俺に…………

「ヤイチ、顔真っ赤だぞ。」

卜部先輩は冷静だ。

「先輩……何故!」

訳が分からない。

「泣いてたから。
なんだ。キスしたら喜んで告白の一つでもしてくれるのかと期待したのに。」

「……はい?!」

先輩は何を言っているのか、宇宙語かはたまた地底語か。

「俺が好きだからキスしたんでないの?


おーい、生きてるか?…………フリーズした?」

先輩の掌が目の前で動いた気がする。

「……先輩の言葉が理解できません。」

さっぱり分からない。

「そうか、困ったな…………」

卜部先輩は考え込む。

「取り敢えずさっきのモデルの続きしてよ」



言われるがまま椅子に座り直した。
ぼんやり、靄がかかったみたいだ。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫