《MUMEI》
純粋
それから有理は真面目に仕事に取り組んでいるようだった。

流理は正直それが気になった。

ただ、映画の撮影の様子とか、進み具合とか聞きたくても聞けなかった。

……ヤキモチ妬いてるなんて、有理には言えない。だって…『仕事』なのだから。


***


今日は環とふたりで会える日。

「どうですか、映画…の方は。今忙しいんでしょう?オレなんかと……会ったりしていていいんですか?」

「忙しいとき程…流理さんに会いたくなるんです」

流理はドキッとした。自然と顔が赤くなっている。

「ど…どうしてオレなんですか」

「さあ…。春日さんを見ているとむしょうに流理さんに会いたくなるんです。流理さんといると癒されるんですよ。疲れとか嫌なこととか忘れさせてくれるんです」

「オレが?」

環は素直で正直で、いつも流理をまっすぐに想ってくれる。

「だから……だから私も流理さんにとっての癒しになりたいんです」

流理は環のあまりの心の純粋さにやられてしまった。

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