《MUMEI》 あなたのことあなた。 あなた 。 愛おしい あな た 。 わたしは、ようやくあなたとひとつになれた。 あなたはわたしであり、わたしはあなたである。 そう。 子供のころのように。 世界が残酷な刻印をあなたに印し、わたしとあなたの間を引き裂いた。 今ではその世界があなたを破壊したその刻印すら、わたしのものである。 ああ。 わたしは幾度呪ったことか。 なぜ、世界はあなたを選んだのだろう。 なぜわたしではなく。 もし選ばれたのがわたしなら、こんな孤独をあじあわずに済んだはずなのに。 でも。 もうわたしたちは、ひとつのもの。 あなたの瞳をとおしてわたしは世界を見ている。 足元には、ひとつの死体。 それは、かつてわたしであったもの。 いまは、ただの抜け殻。 ああ。 わたしはあなたに、話さなくちゃあいけないね。 どうしてこうなったのかを。 それは、ひとつの本との出会いから始まる物語。 その本の名は、こういいます。 「土曜日の本」 前へ |次へ |
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