《MUMEI》
あなたのこと
あなた。
あなた 。

愛おしい あな た 。

わたしは、ようやくあなたとひとつになれた。
あなたはわたしであり、わたしはあなたである。
そう。
子供のころのように。

世界が残酷な刻印をあなたに印し、わたしとあなたの間を引き裂いた。
今ではその世界があなたを破壊したその刻印すら、わたしのものである。
ああ。
わたしは幾度呪ったことか。
なぜ、世界はあなたを選んだのだろう。
なぜわたしではなく。
もし選ばれたのがわたしなら、こんな孤独をあじあわずに済んだはずなのに。

でも。
もうわたしたちは、ひとつのもの。
あなたの瞳をとおしてわたしは世界を見ている。
足元には、ひとつの死体。
それは、かつてわたしであったもの。
いまは、ただの抜け殻。

ああ。

わたしはあなたに、話さなくちゃあいけないね。
どうしてこうなったのかを。

それは、ひとつの本との出会いから始まる物語。
その本の名は、こういいます。

「土曜日の本」

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫