《MUMEI》
練習
『………別れよう』

『真清くん…』

『このままじゃオレ達は互いを縛りあって苦しいままだ。夕妃のことは好きだけど……』

『―――っ…、ゴメンね……真清くん…』

『何でお前が謝るんだよ!謝らなきゃいけないのはオレの方だよ』

『違うよ…私が悪いの。そんなこと…言わせてゴメンね』

――真清は唇を噛んでうつむき、夕妃はただ泣き続けた。

『そろそろ行くよ』

『うん……。…ねぇ真清くん、最後にもう一度だけキスして?これで終わりにするの。真清くんに…執着すること』

『わかった。オレも…そうする』



「カ―――ット!!!!」

唇が近付いたところで監督がOKを出した。

キスシ一ンはまた別で撮るらしい。

実は流理と環は何もかもがまだだった。いつもは会話をするだけで、男女間の行為は一切ない。

「それじゃあ一旦休憩取ろうか。その後すぐにキスシ一ンから始めるからね」

映画でファ一ストキスだなんて、それでいいのだろうか。ふたりにしてみれば、記念になっていいだろうけど。

ただでさえも春日有希は女性とのスキャンダルが多い。隠さないのは事務所の意向らしい。だけど流理はキスなんてしたことがない。ぎこちない動きなんかして、それでおかしいと思われたらどうしよう。

「た…、あ、夏坂さん」

「はい、何でしょうか」

「今から…練習、しませんか」

「何の練習ですか?」

「キスの練習です」

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