《MUMEI》 森の死体わたしは、溜息をつく。 ここまでくると偶然とか妄想だけでは済まされない。 間違いなくなにかが、この本にはある。 わたしの頭のなかでは、赤い信号が激しく点滅していた。 このまま進めば確実に一線を越えそうだ。つまり気がつけば拘束衣を着て隔離病棟に居るようなはめに。 いっぽうで、まあいいかと思う自分がいる。 あなたと。 あなたともういちど一つになることができないのであれば、あとの全てはどうでもいいような気がする。 わたしは、決断した。 全てにさよならをいうことにする。 「判ったわ、エリカ。どうすればいいか教えて」 わたしは本に書き込むと、ページをめくる。 「そうね、今はまだ準備ができていないの。時間をちょうだい。長く待たせるつもりはない。今日の夜までまって。それとね、もうひとつお願いがあるの」 むう、と思う。 見ず知らずのひとにこう立てつづけに頼み事ができるとは、こいつお姫様かなにかなんだろうか。 でも、まあ、いいか。と、思う。 「いいよ。何かな」 ページをめくる。 「わたしの死体、外に送るから。できればきれいに焼いて始末して」 ああそうかと思う。 エリカは死んだっていってたものね。 なるほど。 「いいよ。どこに送ってくるの?」 「森の中」 前へ |次へ |
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