貴方の中の小悪魔
を知る神秘の占い《MUMEI》カオリ
初夏の昼下がり。街は、休日のせいか幸せそうなカップルばかりが目につく。
「…あんなふうにデートしたこと無かったな」
と、小さくつぶやく。
大きな街頭モニターからは流行の音楽が流れ、そばを走る車は高らかにクラクションを上げている。
遠くにその音を聞きながら、圭吾(けいご)は昨日のことを考えていた。
「もう、会わない。」
香はそう言って、涙を流す。
「どうしてですか?
先輩のことはもう愛してないって言ったじゃないですか?」
「続けられないの、ごめんなさい。」
「俺は真剣に、真剣に香さんと結婚したいって思ってる、だから別れ」
「圭吾…よく聞いて。あの人にバレたの…あの人に」
そう言って、香はホテルの部屋を出て行った。
人の流れをさえぎるように、一人立ち止まり、携帯を手に取ると電話をかけ始める圭吾(けいご)。
何度目かの呼び出し音のあと、留守番電話のアナウンスに切り替わった。
「香(かおり)さん
圭吾です。」
「来てくれるまで、まってます。あなたと出会ったあの駅で...来てくれるって信じてまってます。」
電話を切ると、圭吾は一目散にどこかへと走り出す。
―そして、10時間あまり彼女は圭吾の待つ駅には来なかった。
大きな鞄を一つ抱え駅のホームで、ベンチに座っていると。
「きみ、乗るらないの?次最終だから、乗らないなら家に帰ったら」
と駅員に諭される。
「・・・乗ります」
と下を俯いたまま答えた。
「そう、じゃ気をつけてね」
駅員は去っていった。
まもなく最終電車がホームに入ってきた、改札やホームを見渡しても香の姿は無かった。
「かっこわり...俺」
そうつぶやいて、圭吾は駅を後にした。
駅を出で歩いていると、夜行バスの乗り場についた。
「(どこでもいい、ここから離れられれば)」
圭吾は目の前にあるバスに飛び乗った。
席につくと、
「こんなのって...ありかよ」
と、つぶやき。人もまばらな車中ので声を殺して泣いた。
気がつくと、みたこともない町に着いた。
まだ薄暗い停留所の先にうっすらとコンビにの灯りが見える。
「いらっしゃいませ。」
殺風景な店内で、無骨な店員がこちらを見た。
酒とつまみを買ってコンビニを出る。
店を出るとすぐに缶ビールのふたに手をかけ、あっという間に1本を飲みほした。
一瞬、かすかに波の音が聞こえた気がした。
「…波の音?」
圭吾は缶をゴミ箱に捨て2本目をのフタをあけると、ふらふらと音のするほうに歩きだした。
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