貴方の中の小悪魔
を知る神秘の占い

《MUMEI》

ビールを飲みながら道伝いにどのくらい歩いたのだろう。気がつくと買い込んだ酒もあと1本になっていた。

「なんだよ、ぜんぜん着かないじゃん海」
いつの間にか夜が明けようとしていた。
ザブーン、ザブーンと水の音がする。

「海か?」
圭吾は砂浜にたどりつくと、倒れこんだ。そのまま、記憶が遠くなっていく。

「香...。」


波の音がする...なぜだか子供の声も、犬の鳴き声も。
朦ろうとする意識の中で、圭吾は一瞬、薄らと目をあけた。
「ママー、人が倒れてるよ。」
「タク触っちゃだめ。おばあちゃん呼んできて!」
「はぁーい」
と、5歳くらいの男の子が走りさっていく。
その後、また誰かがかけ寄ってきた。
「…香―」

次の瞬間目が覚めると、真っ白な天井が目の前にあった。

「お兄ちゃん目覚めた?」
と、あどけない子供の顔が視界に飛び込んできた。
「ママー、ママー。」
と、子供が騒ぐ。
「(頭が痛い)」
顔をしかめる圭吾。
「どうしたの?」
「お兄ちゃん目が覚めたよ。」
と、得意げに母親らしき女性に話している。
「ありがとう。タク」
と、子供の頭をなでる手が薄らと視界に入ってきた。

「目覚めました?」
「...」圭吾はだまったままだ。
「タクおばあちゃんよんできて。」
「はぁーぃ」
と、子供がかけていった。
「運ぶの大変だったのよ。」
と、冷蔵庫から水を取り出しコップにいれてくれた。
「はい」
「...ありがとう」
「ただの二日酔いと睡眠不足、栄養失調気味だから精のつくもの食べなさいって。」
「...ここは?」
「うちの病院」
「...病院?」
目が天井を仰ぐ、目が回る気持ち悪い。

「うっ」
と圭吾は上半身を起こしあげた。
「待って、はいっ」
と、差し出されたステンレス製の桶に全てを吐きだした。
「はーっ...ごめん。」
と、苦しそうな表情をする圭吾。
「慣れてるから、平気よ!」
と、彼女は笑っていた。
「カオリ、目さめたんだって」
と、50代くらいの女性が入ってきた。
「おばあちゃん。」
「かおり?」
と、圭吾は隣ですわり笑う彼女をみた。
「どうかしたの?」
と50代くらいの女性がそばに寄ってきた。
「いぇ、すみません。」
「まぁ、いいわ。
私はこの病院の院長の朝倉澄子(あさくらすみこ)、こっちが孫のカオリ。とひ孫の拓海(たくみ)。点滴が終わるまで少し安静にしてなさい。
その後、お昼ご飯にしましょう」
と、澄子は部屋をでていった。

「タク、私たちも行こうか?」
「うん」
「じゃ、ゆっくりしててください。お昼はカレーです。」
と、彼女は笑って出て行った。
「…香さんと同じ名前か…」
と圭吾はつぶやいて、また目を閉じた。

「あの子、何かわけ有りなんじゃないの?」
と澄子はカオリにいう。
「みたいだね。」
と、笑うカオリ。
「カオリ、あんた大丈夫?」
「大丈夫だいよ、おばあちゃん。もう、あれから3年もたってるんだから...」

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