《MUMEI》
離れない
「とりあえず、今日は挨拶までにしましょう。

…ゆきも疲れたでしょうし」


神音様の提案で、その場の話し合いは終了した。


「ありがとうございました」


当主の間に、私と神君と神音様の三人が残った時点で、私は神音様にお礼を言った。


「大変なのはこれからよ。
あなたは、御鏡の事を学びながら、仕事をこなさなければならないのですから」

「はい」


(そうだ)


私は何も知らない。


だから、これから学ぶ事がたくさんあるのだ。


「御鏡の一員になるのなら、あなたも学ぶ事がたくさんあるわ」


「はい」


神音様に言われ、神君も頷いた。


「とりあえず、今日はゆっくり休みなさい、二人とも」


神音様がそう言うと、着物姿の使用人二人が私と神君の前に現れた。


そして、私達は別々に、風呂場に案内された。


(今日は、本当に疲れたな…)


湯船につかりながら、私は今日一日を振り返った。


「…当主?…当主!
大丈夫ですか?」


「は、はい!大丈夫です」

(私、当主なのよね)


全く実感がわかず、返事をするのを忘れてしまった。

そして私は、寝間着の浴衣に着替え、寝所に案内された。

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