《MUMEI》

普通に食べればいいのに震えてる。

食べ方を忘れた子供みたいだ。

舌先でチョコレート舐める。前歯が当たる。

指がヤイちゃんの唾液で湿るなんて……堪えられない。
指の力が緩んだ。




カケラが落ちた。


なんだろうこの感じ。

足元がぐらつく。

「ごめんなさい。勿体ない。」

ヤイちゃんはさっさと拾って食べた。

「きたねーじゃないか出せ。」

床は油彩絵の具やら何が付いてるかわからないのに。

「食べろって言ったじゃないですか。」

ヤイちゃんは拾ったときに指に付着したチョコレートを舐める仕草をする。

「腹壊すさ」

「……え。」

三度目だ。
あ、分かった。
こいつ緊張してんだ。

「エーイ。」

心臓がありそうな胸部に触ってみた。
うわ、めっちゃドキドキしてる。

「ピー!」

鳴いた……おっもしれぇ!

「ははははは!」

「先輩!」

ヤイちゃんの耳たぶが赤い。
泣いても、笑っても、怒ってもカワイイ。
見ていて飽きない。

笑ってたら体ポカポカしてきた。
なんだ、こりゃ。

無性にヤイちゃんを高い高いしたい!

「先輩?!」

ヤイちゃんヤイちゃんヤイちゃん!

軽いな。

やばいかも。
頭が 、ヤイちゃんいっぱいになっているかも。

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