《MUMEI》
伊藤視点
「ピザ取んない?」

「はあ〜?何で?」

こっちにやって来るなり裕斗は俺の膝に跨り首に腕を回してくる。


更に耳元をカプッと甘噛みしてきた。

「あっ、もうゾクゾクするよ、こら!舐めるな!」

「たまには俺が秀幸の事抱こうかな〜」
「う゛〜…、それは………」

裕斗だって男だもんなあ、やっぱりしたいよなぁ。うーん…
したいからって他に行かれてもムカつくし…まぁいかねーだろうけど…う〜ん…。

するとクスクスと笑う声が首元でした。
「困ってる〜!可愛いー!」
「こら、俺で遊ぶな!よ〜しいけない子はお仕置きしなきゃな!」

「うん!お仕置きして!」

更にぎゅーっとしがみついてくる。
いつもの香水の香りがして少しドキッとした。

「はあ…、嬉しそうにされたらお仕置きになんねーよ!てか腹減った、もう出来たんだろ?」

「だからピザー」






――何か…嫌な予感…。


「……どけ」

「イヤだ!」

「いいからピザの前にコロッケ見せろ〜ッ!ウリャアッ!」


俺は力任せに裕斗を抱き抱え頑張って立ち上がった。


「わわっ!腰痛めるよ!」

「これ位で年寄り扱いすんじゃねーや!あー軽い、今日は駅弁頑張ってみようかなあ〜」



ほ、本当は辛いっす!

ゆうちゃん軽いけど体長いから!!


よたつかない様に集中しながらキッチンに向かう。

裕斗も観念したのか何なのか俺に確りしがみついている。



「駅弁かー…、した事ないから楽しみ、気持ち良いかな〜」
「……」




――余計な事言っちまった……、はあ…


死ぬ気で頑張るか。


キッチンの前で下ろすと目の前にある不思議な物体に出会った。




「……」




「ね?ピザとろ?」




――貴方の足のサイズは24・5センチでしょ、



ね?正解!?




やった〜!ちなみに僕は27センチ!




みたいな…


…みたい…な…。



………はあ、そうゆう事な〜。





「上手く形作れなかったんだよー、手にベタベタついちゃうし玉子何個使っても追い付かないし油吸いまくるし……」




足元に新聞紙が敷いてある。


油はねをフローリングにつかせない工夫。


ガスじゃねーでIHだから出来る事だけど揚げ鍋のところ以外も新聞で上手く汚れない工夫がしてあって…。




なるほどと関心しながら俺は草鞋の様なコロッケを手で掴みパクついた。



「…美味いよ」



「え?」



「ほら」



裕斗の口元に運んでやるとパクリと食べた。



「あー美味しい…」


「ピザはいらねーな、よし飯にしよう!」




俺がコロッケの乗っかった皿をテーブルに運びだすと裕斗は新聞紙を丸め出した。

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