《MUMEI》 記憶の断片「…稲田ってさ、場所も状況も選ばないよね。」 『空気読めないって事?』 「そうじゃないけどっ。」 何か変か? MDだけ持った大島を5階の休憩室に連れて来た。 広いしテレビもあんのに誰も居ない。 『…告れなかった訳で。』 「…だね。」 『別にいつでも良いはずなんだけどな。』 「うん、まぁ…諦めた訳じゃないんだよね?』 『そうだな。だけど機会を逃したって感じが抜けきれない。』 「あの日、告ろうとはしたんだ?」 『…花火終わって少しぶらぶらした後、帰ろうって事になって。当然あいつんちまで送るよな。』 「うんうん。」 『で。…公園まで行ったんだ。』 「ほぉほぉ。」 『…それだけ。』 「…。出来なかったのね。」 『つーか…そうなんだけど。大島はどうなの?』 言うべきか、言わないべきか。 告るなんて雰囲気じゃなくなった理由。 「…!!話、摩り替えてもだめっ。」 『俺の話はここまで♪まぁちゃんと頑張るから。そっちは?』 「…応援してる。あたしは何も…。」 『篠崎の事、どんくらい知ってんの?』 「え?んーと…お姉ちゃんが居て、誕生日が納豆で…」 『告らないのってなんか理由あんの?』 「んーん。ただ、単に好きってだけでそれ以上は別に…お喋り出来たら幸せです。」 『そう…。香水貰ってたろ。嬉しかった?』 「うん、そりゃね…♪このMDも篠崎が貸してくれたんだ。」 『へぇ…。』 「篠崎に絡んで貰える事けっこうあるんだよ、これでも♪まぁ…向こうはなんとも思ってないって事は充分わかってるから。でも、それで良い。」 言えねぇ…俺らがあの日見た光景を。 つーかじゃあなんなんだ篠崎のそういう態度。 …彼女居るんだろうが。 「見ーっけ!」 「…結衣ちゃん!」 『…びっくりした。』 「てかここ使用禁止だし!お風呂入っちゃったよ?篠崎のピッチ借りて電話したのに鞄の中でブーブー言うし!」 「げ…忘れてた!ごめんね結衣ちゃんっ。」 「良いよ、部屋のシャワー使いな?て言うか写真撮ってあげる♪」 …。 「あれ?一葉なんであんなに上手く撮れんの?!」 「あれね、安物だからコツが…。」 「でもラブラブな感じは伝わる♪」 「え。」 『え。』 出来上がった写真は、俺ら被写体が全体のちょっと右寄りだった。 前へ |次へ |
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