《MUMEI》
いつもの日常。
“あ〜あぁ〜今日も憂鬱な1日が始まるよぉ。




ヤバッッ。遅刻するぅ。”




私(瑠伊)はいつものように慌しくバイトに行く。




プルルル〜(携帯)




電話だ。




私は、バイクのメットを被りながらややこしそうに電話に出た。




『もしもし。あっリコ?どした?こんな朝早くに。』




リコはいつものハイテンションで




『瑠伊!今日バイトおわったら憐(れん)の店に来てぇ〜。大事な話があるの。絶対来てね。じゃね待ってるから。…プーップーップーッッ』




『…。』




まただ。リコの強引な誘いは昔から変わっていない。




私の予定はお構いなしで一方的に電話を切られた。




バイトが終わり、憐の店についた。




『…いらっしゃいませ。  また一人ですか?』




憐は無愛想な敬語でさらっと嫌味を言う。




『今日はリコに呼び出されたの。あれ?まだ来てない?』




『…まだ。』




『自分から呼び出しといて。いっつもこれだぁ。憐。とりあえずウーロンハイ。』




注文と同時にでてくる。




『さっすが憐。やっぱ分かってるね。』




『…そりゃお前、いつもロンハイだし。お前のバイクの音が聞こえたら準備してるから。』




『…ふーん。』




興味なさそうな相づちをしたけど、本当はちょっと常連客気分で嬉しかった。




『今日もバイク置いてくの?』




『あったりまえじゃん。飲酒運転は危ないでしょ。明日の朝取りにくるから。』




『あのさぁ…今日、閉店までいるなら俺が送りがてらお前のバイクで乗っせってやるけど。』




『…。』




『おい。聞いてんのか?』




私はびっくりして目が点になっていたらしい…。




『だって…今までそんなこと一回も言ってくれたことなかったじゃん。びっくりしたよ。』




『…そうか?嫌なら別にいいけど。』




いきなり不機嫌そうになった憐の顔が妙に気になった。




『待ったぁ〜?』




私たちの気まずい空気に全く気付かずリコがやってきた。




『…いらっしゃいませ。』



憐は不機嫌なままだったけどリコはお構いなしで彼氏の事をグチり始めた。




『憐、瑠伊聞いてよぉ。』



その言葉から約3時間、私と憐はずっとリコの彼氏のグチを聞き続けた。




“リコ。溜まってんなぁ…。私、そろそろ帰りたいけど…”




『お前ら今日は飲み過ぎじゃねぇ?もう帰ったほうがいいよ。』




憐のナイスフォローでやっと帰れることになった。




リコはまだ話足りなそうだったけど、憐と二人で半ば強引にタクシーに押し込んだ。




『ふぅー。今日はリコ荒れてたなぁ〜。』




『そうだな…。』




『…うん。』




なぜか憐との沈黙が怖かった。お酒の力もあって私は憐に聞いてみた。




『ねぇ、憐。今日機嫌悪くない?』




『そんなことねぇよ。』




『えぇ〜なんか怒ってんじゃん。』




『そんなことねぇって。』



ムキになって否定する憐になんだか腹が立った。




『…そっか。じゃ私の勘違いだね。私もそろそろ帰るわ。バイクは置いといて。明日取りにくるから。』




嫌味な言い方で言うと、千鳥足になりながら私は家に帰った。

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