《MUMEI》
フラッシュバック。
〜今から3年前〜


『俺ら、付き合わない?』


『…うん。』



私の初めての彼氏。
同じ大学、同じ学部だったヨウスケ。
決して目立つタイプじゃなかったけど、何故が彼の周りにはいつも人が集まってた。バカ騒ぎをするでもないのにヨウスケは常に輪の中心だった。




ずっと私の片思いだった。



まさか、告白されるなんて…。




『え〜?ヨウスケと付き合ったぁ〜?マジで?』



照れ臭かったかったけど、親友のリコには講義の後、報告した。




『瑠伊。全く男っ気なかったし、ヨウスケと話してるとこなんて見たことなかったよ〜。いつからそんなに仲良かったのぉ?』




私は照れながら答えた。




『…バイク。…ヨウスケもバイクで登校してるじゃん。毎朝、バイク専用の駐車場で会ってよく話してたんだ…。』



『そっか。ここの大学、バイク登校少ないもんね。あそこの駐車場すっごく離れてるし。…なるほどねぇ。そんな穴場のナンパスポットがあったんだ…。』




『そんなんじゃないって。話すって言っても大した話してないよ。ヨウスケが私の事、好きだなんて思ってもみなかったし…。』




『へぇ〜。まぁ〜瑠伊は結構、可愛いのに20歳まで彼氏がいなかった事のほうが驚きだけどね。』




『…そぉかな?』




『そうだよ。でも私は、瑠伊の初カレはコウタになるって予想してたんだけどなぁ〜。』




『…コウタって?』



『アイツだって。アイツ。いつもヨウスケと一緒にいる一番ウルサイ奴。』




『あ〜。…ってなんで?』




『だってコウタが“瑠伊を紹介して”って私に頼んできたことあったもん。』




『うそぉ?だってリコ、そんな事言ってなかったじゃん。』




『だってぇ〜、私より瑠伊がモテるなんて悔しかったんだもんっ。』




何…その理由。




『って言うのはウソ。瑠伊が合コンとか紹介とか嫌いって言ってたから断っといたんじゃん。』




『…そうなんだ。確かに苦手。…ありがと。』




リコは腕時計をチラッと見て慌てて言った。




『ほらほらっ。もうこんな時間じゃん。ヨウスケが待ってんじゃない?』




『あっ本当だ。じゃ行くね。また明日。』



駐車場まで息をきらせて走っていく。


バイクに、またがったまま私を待ってるヨウスケが見える。




3年前の私は…
バイクのおかげでヨウスケと出会えた。
そして、それからの半年間は本当に楽しかった。
私の初めては全部ヨウスケだった。
初めて私が愛した人だった…。




3年前の記憶が次々と…よみがえってくる。



昨日のことみたい…。





…ヨウスケ。





『…会いたいよ。』

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