《MUMEI》

それは、神にとって、大問題だったが、鳴神の話では、晶は実体化はしていないようだった。


「昔も今も。晶がいるのは、…どこじゃ?」


「決まっている」


晶がいるのは…


神はハッとして、眠るゆきに近付いた。


そして…


「ここに、戻ったのか、晶は」


ゆきの左手を見つめた。


そこには


晶の名前の由来になった


雪の結晶によく似たあざが

再び


浮かび上がっていた


「今頃二人は夢の中じゃ」

「な…」


バシッ!


慌ててゆきを起こそうとする神の頭を、鳴神はまた叩いた。


「何をする!」

「それはこっちの台詞じゃ。
姫は疲れておるのじゃぞ。
…寝かしてやれ。

よいではないか。夢で会うくらい」


「よくない!

…浮気は駄目だぞ、ゆき」

神は、この騒ぎの中で熟睡しているゆきの寝顔を見つめた。


…心無しか、その寝顔が


今まで神が見た中で、一番幸せそうに見えて


バシッ!


「じゃから、起こすなと、何度言わせる気じゃ!」


「お前こそ、何度俺を叩けば気が済む!」


神は頭にこぶを何個も作った。


「雷よりましじゃろう?」

鳴神はそう言って笑った。

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