《MUMEI》

神に対して私が実際に『出勤』する事は滅多に無かった。


私の力が必要になるほどの人災は、滅多に起きない。

大抵は、他の一族の人達が行ってくれる。


それに、ここからでも、ある程度の災害は防止出来る。


やり方は簡単だ。


―祈るのだ、ひたすらに。

大切な人が、今日も無事に一日過ごせるように。


無心に、国を想うよりも、この方が、集中でき、効果も上がった。


私の隣で、神音様も一緒に祈るのが、日課になっていた。


そして、空いた時間で、御鏡の長い歴史の勉強をする。


学ぶ中で、私は一つのしきたりを壊した。


それは


『御鏡の者は、義務教育を公共の場で受ける必要は無い』


という、規律。


これまで、御鏡の人達は極力屋敷から出ず、閉鎖的な環境で育ってきた。


それは、人の色が見えるという、特殊能力を持つ故に、一般人との集団生活が難しいだろうと言われてきたからだ。


また、国の上層部からも、『人に必要以上に接して、力を失ったり、人に絶望されては困るから』と言われていた。


しかし、私は『そうは思わない』と反論した。


確かに、この力を持つ者は、集団生活は大変だ。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫